* 理想の彼女
理想の彼女に会って結婚を申し込んだ。
二年後に双子の娘が生まれて美希と有希と名付けた。
両手で娘たちと手をつないで歩いた。
一眠りする間に時は経ち、娘たちは母親より背が高い。
「ね、言った通りでしょ」
でも彼女の口癖は二十年前と変わらない。
* 石化
「世界は石化してるね」
彼女は嘆息した。
「溶解するよりましさ」
僕は反論した。
「固まるのと溶けるのに違いあるの?」
彼女が首を傾げる。
「もちろんさ、石化は呪文で元に戻せるからね」
それを聞いて、彼女は笑顔になった。
こんな風にして僕は、大事なことを訊ね忘れてしまう。